して飛来するという。東京はユリカモメが都の鳥になっているが、みやこどりはユリカモメの雅称でもある。
東京消防庁の消防艇兼救助船はみやこどり(一一九総トン)という。平成三年、隅田川造船で建造され航海速力は一八・七ノット。消防ポンプは一二六〇m3/h一台と九〇〇m3/h二台備えつけている。
*やまどり(山鳥)山林にすむキジ科の鳥でわが国の特産種。秋田の県鳥になっている。宮崎はコシジロヤマドリが県鳥。
やまどり丸(二八総トン)は秋田船籍で、秋田海陸運送が所有しているが、昭和四十一年進水なので船齢は今年で三十年。
山鳥の雌雄は峰を隔てて眠るという。どこか船乗りにも似ていみではないか。古今和歌集にも「秋風の吹き寄るごとに山鳥の触りし寝ればものぞ悲しき」とある。
*らいちょう(雷鳥)特別天然記念物。富山・長野・岐阜の県鳥。
雷鳥丸(九九三総トン)は石巻船籍で、北日本海運所有の内航貨物船。富山県富山新港管理局の曳船らいちょう二六五総トン)は新湊船籍。横浜ヨットで建造され曳航力は四〇トン。
*わし(驚)日本にはイヌワシ、オジロワシ、オオワシ、カンムリワシの四種がいて、すべて天然記念物に指定されている。
日本保護協会の調査では、イヌワシは全国で百三十四つがいを含んだ三百羽しか生息が確認されておらず、営巣地も開発によって破壊されつつある。
翼を広げれば二メートル、行動圏は百平方キロといわれるこの絶滅危倶種の名をもつのは、石川県所有の曳船いぬわし丸(一五一総トン)。金沢港湾事務所に所属する沿海船、昭和六十三年進水。イヌワシは石川の県鳥。
うみわし(二八総トン・宮城県)は海にいる鷲の意であり、固有の種類ではない。
イーグル1(三五総トン)とイーグル2(四六総トン)は名鉄海上観光船の高速旅客船で、平成四年と五年進水の新鋭船だ。
アイボリーイーグル(一〇、四〇二総トン)は冷凍運搬船。平成四年四国ドックで進水。三井造船の一五、三〇〇馬力の主機を唸らせて太平洋を越える「象牙色の鷲」である。
〔昆虫船名〕
平成二年五月、JR九州は博多〜平戸〜長崎オランダ村にジェットフォイルを就航させた。その名は、ビートル(一六四総トン)。カブトムシとか甲虫丸では船名にならない。
船名は国字を使わなければならないので「ビートル」と船首尾に書いてはいるが、それよりも大きく「BEETLE」という白ペイントが真っ黒な船体にくっきりと浮かびあがるようになっていた。
当時のパンフレットからそのうたい文句を二-三紹介しよう。
BEETLEは前代未聞のカブトムシである。BEETLEは空を飛びません。海も泳ぎません。でもしかし、うみをとぶのです。だからウミトブカブトムシ。
BEETLEは一分間に約一八○トンもの水を噴射して、その推進力で航行する超高速旅客船です。
パンフレットのなかの船名は、あくまでも「BEETLE」であることがわかる。そのほうが、一見カッコいいし、時代の最先端をいく国際化された超高速ののりものというイメージがあるからだろう。因みに平成七年版船名録では、ビートル二世(一六四総トン)が掲載されている。
さて、水生の甲虫はみずすましだが、滋賀県の所有船にみずすまし(三二総トン)とみずすまし二世(五一総トン)という船名がある。
前者は昭和五十九年、後者が平成元年の進水である。
〔福祉船名〕
高齢化時代を迎え社会福祉の充実が叫ばれているが、夢ウエル丸(九九総トン)という福祉船がある。船名の由来は「夢を植えていく」ことから名付けられたと思っていたが「ウエル」は頭文字の「WEL」から採られていた。WはWorth(価値ある)、EはEasy(ゆとりある)、LはLusty(活力ある)、LはLife(生活)の意味だそうだ。
本船は岡山県笠岡市の市営福祉船で、三十有余の島々を巡航しながら年寄りに入浴サービスや健康相談を行っている。平成五年進水の軽合金製、製造費約二億円、全国に広がってほしい船名である。
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